私たちの社会は、自律分散システムであると考えられる。中央集権的なシステムでは、中央の主体がシステム全体をコントロールする。これに対して、分散型自律システムでは、個々の構成要素はある程度独立して振る舞う。その結果として全体の振る舞いが創発するのだ。例えば、ある企業の中の人々は、個々に意思決定を行うが、集団として協調的に行動する。都市は生き物ではないが、個々の構成要素(市民)の意思決定によって生き物のように変化する。私たちは、モデルベースアプローチに従い、マルチエージェントシミュレーションの手法を用いて、このような分散型自律システムの理解を深め、人間の知能の理解と、その応用を目指している。
記号創発システムは、多くのエージェントが記号的に相互作用しながら、感覚運動系を使って物理的環境と相互作用することで成り立っている。人間は言語進化を経て、言語を学習し、使用することができるようになった。創発的なコミュニケーション能力によって、人間は世界に適応することができるようになったのだ。しかし、そのダイナミクスの全容は明らかになっていない。
この研究課題は、システムや言語における記号の創発の過程を再現できる計算機モデルの開発を試みるものである。このような研究は、創発的コミュニケーションとも呼ばれる。
また、その成果を人間とロボットの相互作用に適用し、より意味的に適応的なコミュニケーションを実現することも目指している。
Yoshinobu Hagiwara, Kazuma Furukawa, Akira Taniguchi & Tadahiro Taniguchi, Multiagent multimodal categorization for symbol emergence: emergent communication via interpersonal cross-modal inference, Advanced Robotics, 36(5-6), 239-260, 2022. https://doi.org/10.1080/01691864.2022.2029721
Yoshinobu Hagiwara, Hiroyoshi Kobayashi, Akira Taniguchi, and Tadahiro Taniguchi, Symbol Emergence as an Interpersonal Multimodal Categorization, Frontiers in Robotics and AI, 6(134), 1-17, 2019. DOI: 10.3389/frobt.2019.00134
産業革命以来、化石燃料は私たちの社会で主要なエネルギー源となってきた。しかし、化石燃料は将来、私たちの世界から姿を消してしまう。この燃料不足の危機を乗り越えるためには、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーを活用することが重要だ。このような再生可能エネルギーを有効に利用するために、電力網を分散型電力網に変えていく必要がある。本研究では、i-Reneと名付けた分散型自律分散型スマートグリッドを提案した。このような新しい電力網を開発・評価するために、知能システム、経済学、ゲーム理論、制御理論などの観点から研究を行ってきた。
* 現在、この研究テーマは終了しています。
Tadahiro Taniguchi, Tomohiro Takata, Yoshiro Fukui, and Koki Kawasaki, Convergent Double Auction Mechanism for a Prosumers’ Decentralized Smart Grid, Energies, 8(11), 12342-12361, 2015. doi:10.3390/en81112315
Tadahiro Taniguchi, Koki Kawasaki, Yoshiro Fukui, Tomohiro Takata, and Shiro Yano, Automated Linear Function Submission-Based Double Auction as Bottom-up Real-Time Pricing in a Regional Prosumers’ Electricity Network, Energies, 8(7), 7381-7406, 2015. doi:10.3390/en8077381
Yoshiro Fukui, Shiro Yano, Tadahiro Taniguchi, Convergence error analysis of the DSM with dual-decomposition for the smart grid, SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration, 9(3), 115-121, 2016. https://doi.org/10.9746/jcmsi.9.115